ミッション/ビジョンに込めた思い

  1. ミッション/ビジョンに込めた思い

会社はステークホルダーが幸せになる「道具」

会社は誰のモノか

2006年頃、ライブドア元社長の堀江さんの事件をきっかけに「会社は誰のモノか」という議論が活発に行われました。その後、「もの言う株主」が話題になったことから、「結局は株主のものなんじゃないの」という論調が優勢になっていったことを強く憶えています。

そもそも、会社は誰のものでもない

私はこの問いを考えていく中で、問いそのものに違和感を覚え、会社の定義を「ステークホルダーが幸せになるための道具」としました。ここで言うステークホルダーには株主だけではなく、そこで働く人とその家族、クライアントやパートナーといった取引先、その取引先の株主、そこで働く人とその家族など多くの人が含まれます。

利益は目的か

何を当然のことを...と思われる方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、利益によって生み出されるキャッシュは、会社を人間の体に例えれば血液とも言えるぐらい大切なもので、これがなければ会社は成り立ちません。では、会社の目的は利益を得ることなのでしょうか。

利益は手段であって目的ではない

これは残していくべき文章ですからあえて踏み込んで書きますが、私の定義する会社において、利益は目的ではありません。利益は会社(=ステークホルダーが幸せになるための道具)を実現するために必要な資源です。

時代に流されないステークホルダーが幸せになれる経営理念

利益を得ることが目的ではないなら、会社はどういった価値観をもって存在するのでしょうか。その問いに答えるものが経営理念です。経営理念とは会社の存在意義を示す最も上位の概念です。これは時代の変化によって変わらないものと定義しました。
もう少し短い形にしたかったのですが、考え抜いた末、

社会と対話し、コミュニケーションをより良くデザインしていくことで、
社会と私たちが共に幸せな状態であることを目指す

ことを会社の目的、すなわち経営理念に決めました。

判断基準としての機能するかどうか

経営理念、ビジョン、クレド、すべてに共通して言えることですが、標語として壁に貼ってあるだけではちょっと残念です。私たちの理想は、何かに迷ったとき、自らの存在意義に立ち戻り、判断基準にできることです。
例えば何か新しいプロジェクトを始めようとなったとき、私たちには大きな利益をもたらすけれど、ステークホルダーの誰かが不幸になるようであれば、経営理念によって「やらない」という判断ができるようにする、というようなことです。

経営理念をどう実現するかを定義するビジョン

ビジョンは、経営理念の下位概念としました。経営理念が「目指す」という終わり方にしてあるので、ビジョンでは、「何をどのようにすることで経営理念を実現するのか」を定義するものとして、「インターネットを用いて、情報価値の最大化とより良いコミュニケーションを実現する」と決めました。

標語にならないために

いま、私たちが日々行っているクライアントワークの具体的アウトプットは、コンサルティングやWebが多いです。日々の中では、当然のことではありますが「作業」に多くの時間を費やしてなかなか経営理念やビジョンを思い出すきっかけは多くありません。

社内ではよく『このプロジェクトの目的は?』という会話がされます。

提案書を書くこと、デザインをすること、コードを書くこと、広告を管理する、強いてはWebをつくることは、プロジェクトの目的を達成する「手段」です。作業から俯瞰的にモノゴトを考える癖をつけて、プロジェクトからさらに会社という視点で、ビジョンである「インターネットを用いて、情報価値の最大化、より良いコミュニケーションを実現すること」につなげていく習慣をつくれたらと考えています。

よくこういった目的を意識するという話で出される有名は話を引用しておきます。

3人の労働者が建設現場で働いているところに通行人が近づいてきました。

1人目の労働者は汗と泥にまみれて仏頂面をしていました。
通行人が「あなたは何をしているのですか」と尋ねると、彼は「見ての通りレンガを積んでるんでさあ」と答えました。

2人目の労働者も同じように汗と泥にまみれて仏頂面をしていました。
通行人が「あなたは何をしているのですか」と尋ねると、彼は「時給2ドルで働いてるんでさあ」と答えました。

3人目の労働者も、やはり泥に汚れて汗まみれでしたが、希望に燃えたいきいきとした表情をしていました。
やっている仕事は他の二人と同じなのに、彼はそれを嬉々としてやっているように見えました。
通行人が「あなたは何をしているのですか」と尋ねると、彼は

「いま自分は大聖堂を建ててるんでさあ!」

と答えました。

クレドは具体的な行動指針として

クレド(credo)は信条を意味するラテン語です。ザ・リッツ・カールトンのものが有名で、ご存じの方も多いと思います。経営理念、ビジョンも先の通り、一旦日常の業務から引いた視点で考えざるを得ないものです。
クレドは経営理念、ビジョンより具体的で行動指針として大切にすることを決め、あわせて、考えるポイントもあわせて示すことにしました。また、コアコンピテンシーという形でクレドを評価制度に組み入れました。
クレドは、私を中心にコアメンバーでまとめたものですが、なるべく「あるべき論」ではなく、私たちが普段から心がけている行動からしみ出したような言葉を、時間をかけて探ってきました。まだまだ荒いところやダブリ感もありますが、少しずつアップデートしていければと考えています。

変わるもの変わらないもの

『ビジョナリー・カンパニー 2』には、「誰をバスに乗せて、誰をバスから降ろすのか?」という一文があります。INIという会社で一緒に働くメンバーは、この経営理念、ビジョン、クレドを大切に出来る人。採用基準にもつかいます。

社会は常に変化していくので、私たちが提供していく価値も変化していきます。変化していく中で私たちが大切にすること、譲らないことは何なのか。それが経営理念、ビジョン、そしてクレドです。

2007年12月 和田 嘉弘

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