三菱電機ビルソリューションズ株式会社様 - 業績は悪くない。それでも、営業を変えたリーダー企業の取り組みとは
三菱電機ビルソリューションズ株式会社様 - 業績は悪くない。それでも、営業を変えたリーダー企業の取り組みとは

マーケティンググループ 庄司圭一様
「業績は悪くない。だから、変える理由が社内に通らない」。営業DXを始めたい多くの企業が、この壁の前で止まります。上層部は理解を示す。それでも現場は動かない。部門をまたぐ調整で止まる。
三菱電機ビルソリューションズ株式会社(以下MEBS)は、この壁を越えました。営業担当700人超(全社員は約1万3,000人)、昇降機メンテナンス国内シェア1位。売上も主力事業も盤石なこの会社が、2020年に「営業スマート化プロジェクト」を立ち上げ、4年でWebからのお問い合わせを約2.7倍にしています。
始まりは、庄司圭一様を含むわずか5人。実務担当は3人でした。専門家はいません。予算も、最初はクローズドな小さなものでした。
その5人が、どんな判断で組織を動かしたのか。INIが2021年から支援してきた立場から、庄司様の言葉とともに見ていきます。インタビュー全編は、記事末尾の動画で公開しています。
業績は悪くない。それでも、変えた
MEBSの主力である昇降機事業は成熟し、売上は堅調でした。だからこそ、変える必然性が社内に見えづらい。
庄司様は、当時の営業をこう振り返ります。「MEBSの営業は昔からアナログで、少し孤独な業務でした」。集客から案件育成、商談化、受注まで、その全プロセスを一人の営業担当が抱えていた。エンジニアリングの会社では投資は生産系や技術系に向かい、営業には回らない。現場には「昇降機というような商材でB2Bビジネスなんだからアナログでしょうがない」という諦めがありました。
MEBSが変える理由に据えたのは、目先の売上ではなく長期の視点でした。競合や新興企業の台頭、コロナ前後のデジタル化要請。そして「営業への投資が十分でなかった」という積年の課題。反発より、期待の方が大きかったといいます。
ポイント:
業績が良いと、変革の必然性は社内に伝わりにくい。MEBSは「目先の売上」ではなく「長期で見れば危うい」を変革に取り組む理由に掲げ、営業DXを削減ではなく投資と位置づけた。だから現場は、反発ではなく期待で迎えた。

「効率化」と呼ばなかった
営業DXのKPIを、MEBSは「効率化」と呼びませんでした。
「効率化と言うと、削減する、少なくする、という印象を持たれます。特にエンジニアリングの会社では」。代わりに選んだのが「時間創出」です。営業が提案や関係づくりに使える時間を、どれだけ増やせたか。測る対象を、減らす方向から増やす方向へ反転させました。
削られる側に回るのか、時間を取り戻せるのか。現場にとっては正反対です。この一語の違いが、現場をプロジェクトの味方に変えました。
ポイント:
営業DXのKPIを、MEBSは「効率化」ではなく「時間創出」と名づけた。効率化は人員削減の不安を呼ぶが、時間創出は現場が自分の味方だと受け取れる。同じ施策でも、KPIの名前で現場の受け取りは変わる。
カタログから、集客の場へ
もうひとつの判断が、Webサイトの役割の再定義です。
「かっこいいデザインは、社内承認は通りやすいんです」。庄司様はそう言った上で、そこにコミットしなかった。目指したのは、集客とコンバージョンを生むサイト。当時のMEBSのサイトは製品カタログのデジタル版でしたが、それを現代のB2Bマーケティングの設計思想へ組み替えていきました。
施策は段階的です。2021年にサイトを刷新し、訪問者をトラッキングできる基盤(MA・CMS)を整備。2022〜23年にオウンドメディア「ビルソリューションジャーナル」を立ち上げ、年60〜70回の社内勉強会でノウハウを組織に定着させました。2023〜24年は製品ページのSEOとコンバージョン改善に注力。この積み上げが、約2.7倍という結果につながっています。
INIが2021年から担ってきたのも、この領域です。B2Bでは、営業に話がわたる頃にはお客様の意思決定はほぼ固まっている。だから手前のWebサイトやオウンドメディアで検討にどう寄り添うかが成果を分けます。庄司様のこだわりと、INIのB2Bマーケティングの考え方は、同じ方向を向いていました。
ポイント:
MEBSは、Webサイトを製品カタログの置き場から、集客とコンバージョンを生む場へ役割を定義し直した。見栄えの良いサイトは社内承認を通りやすいが、成果には直結しにくい。承認の通りやすさより成果を優先した。
専門家がいないまま、始める
内製で始める以上、要件を作るのは専門家ではない自分たちです。庄司様のインプットは、まず書籍でした。「専門分野は本を5冊くらい読めば、専門家と同等の話ができる、と昔教わったので」。その独学に、パートナー企業の実務知識を掛け合わせました。
パートナーに求めた基準は明確でした。「要件を鵜呑みにして『やります』と言うのではなく、『こっちの方がより良い選択ですよ』と提示してくれる方が良い」。専門家でない自分たちが作った要件を、より良い方へ導いてくれる相手。加えて、社内調整が難しい局面で意思決定そのものに踏み込んでくれること。庄司様がINIに感じていたのは、この2点だったといいます。
推進体制も特徴的でした。「なぜやるか」は経営が決め、「どうやるか」は現場が自由度高く決める。トップダウンとボトムアップの両立です。情報をクローズドにせずオープンにしたことで、関係部門を巻き込みやすくなりました。
ポイント:
専門家がいない内製DXでは、要件を作る側も手探りになる。MEBSがパートナーに求めたのは、言われた通りに作る相手ではなく「こっちの方が良い」と別案を返す相手だった。推進は、なぜやるかを経営サイド、どうやるかを現場サイドで分けた。
数字と、距離
成果は、当初の見込みを超えました。Webサイト経由のお問い合わせは、当初見込んでいた倍を超えて約2.7倍に。営業が本来の仕事に使える時間は、2024年度目標の約2.75倍を創出しています。
ただ庄司様が最大の手応えに挙げたのは、数字ではありませんでした。「現場との距離が、非常に近くなった」。以前はマーケティングと縁のなかった営業から、「見込み客をインサイドセールスにどう渡せばいい?」という相談が来るようになった。孤独だった営業が、チームの営業に変わったのです。
経営が掲げた方針が、現場の一人ひとりの動き方にまで届く。ここまで来て初めて、変革は根づいたと言えます。5人だったチームは、今は20〜25人に増えました。
そして次は、カスタマーサクセスへ。新規のお客様をつかむ仕組みはできた。今度は、すでに関係のあるお客様との接点を深めていく。「営業スマート化」は、システムを入れて終わる話ではなく、5年をかけて社内に根づき、今も次の段階へ進んでいます。
MEBS様がぶつかった壁は、特別なものではありません。上層部の理解はあるのに現場が動かない。部門をまたぐ調整で止まる。多くの大企業が、同じ場所でつまずいています。
INIがMEBS様と5年間ご一緒してきたのは、その壁を、一緒に越えていくことでした。もし同じような壁に心当たりがありましたら、お気軽にご相談ください。